📊 AWSインフラコスト最適化と移行戦略

包括的分析レポート

🎯 エグゼクティブサマリー

主要な発見事項

現状のAWS利用料は実際のワークロードに対して不釣り合いに高額です。

6ヶ月間の総支出:¥1,713,444

月額平均:¥285,574

💰 コスト内訳(6ヶ月間)

経路A:AWS最適化

推奨度:最高

削減率:50-70%

推定月額コスト:¥57,500

リスク:低 | 実装期間:3ヶ月

経路B:ハイパースケーラー

推奨度:中

削減率:40-60%

GCP/Azure移行

リスク:中 | 実装期間:6-12ヶ月

経路C:国内プロバイダー

推奨度:中

削減率:最大70%+

さくらインターネットAppRun

リスク:高 | 実装期間:6-12ヶ月

🎯 推奨アクション

  1. 即座に実行:経路Aの最適化を3ヶ月以内に完了
  2. 並行実施:GCPとさくらインターネットでPoCを開始
  3. 長期判断:PoC結果に基づき6-12ヶ月後に最終決定

📈 現行AWSインフラとコスト構造の分析

1. 支出内訳の詳細

サービス 6ヶ月間の費用 全体比率 月額平均
RDS (Aurora Serverless v2) ¥786,339 46% ¥131,057
CloudFront ¥416,883 24% ¥69,481
Lambda ¥137,649 8% ¥22,942
EC2 ¥118,440 7% ¥19,740
その他(WAF, API Gateway, S3等) ¥254,133 15% ¥42,355

⚠️ 重要な発見:アーキテクチャのミスマッチ

Aurora Serverless v2は貴社のワークロードに適していません

  • 平均ACU使用量が非常に低い(0.5-3 ACU)
  • 負荷が安定しており、スケーリング機能が活用されていない
  • 活用していない機能に対してプレミアム料金を支払っている状態

2. データベース利用状況

gai-production-mysql8

平均ACU数:2.84

相当メモリ:約5.68 GB

qsh-production-mysql8

平均ACU数:0.57

相当メモリ:約1.14 GB

marketprice-production-mysql8

平均ACU数:0.54

相当メモリ:約1.08 GB

3. Lambda利用プロファイル

1日平均実行回数:162,445回

平均実行時間:742ms

月間リクエスト数:約487万回

このパターンは、アーキテクチャ最適化により大きなコスト削減が期待できます。

🚀 経路A:AWS内での戦略的コスト最適化

✅ 最優先推奨アプローチ

低リスク・高リターン・即効性あり

1. データベース最適化戦略

Aurora Serverless v2 → プロビジョニング済みインスタンスへ移行

クラスタ 推奨インスタンス スペック
gai-production db.t4g.large 2 vCPU, 8 GiB
qsh-production db.t4g.medium 2 vCPU, 4 GiB
marketprice-production db.t4g.medium 2 vCPU, 4 GiB

2. RDSリザーブドインスタンス適用効果

シナリオ 構成 オンデマンド月額 1年RI月額 3年RI月額 削減率
現状 Aurora Serverless v2 ¥131,057 - - 0%
最適化案 db.t4g (large×1, medium×2) ¥24,500 ¥17,500 ¥12,000 約91%

3. Lambda最適化戦略

Graviton2への移行

x86からArm64アーキテクチャへ変更

  • 最大19%のパフォーマンス向上
  • 20%のコスト削減
  • 設定変更のみで実装可能

メモリ適正化

AWS Lambda Power Tuning活用

  • 最適なメモリ量を自動提案
  • コストとパフォーマンスのバランス
  • 追加の10-30%削減可能
アーキテクチャ 月間リクエスト コンピュート料金 合計月額 削減率
現状 (x86) 4,873,350 ¥5,500 ¥5,665 -
Graviton2 (Arm) 4,873,350 ¥4,400 ¥4,565 約20%

4. 総合的なコスト削減効果

最適化後の予測月額コスト

¥57,500

現状比較:¥137,434の削減(約70%減)

年間削減額:約¥1,649,208

📋 実装タイムライン

  1. Week 1-2: RDSインスタンス選定と3年RIの購入
  2. Week 3-4: データベース移行計画の策定
  3. Week 5-8: ステージング環境での検証とカットオーバー
  4. Week 9-10: Lambda Graviton2移行とメモリ最適化
  5. Week 11-12: モニタリングと最終調整

☁️ 経路B:ハイパースケーラー競合への移行

1. サービスマッピング

カテゴリ AWS GCP Azure
コンテナ実行 ECS Cloud Run / GKE Container Apps / AKS
サーバレス関数 Lambda Cloud Functions Azure Functions
リレーショナルDB RDS (MySQL) Cloud SQL Azure Database
CDN CloudFront Cloud CDN Azure CDN
WAF AWS WAF Cloud Armor Application Gateway WAF

2. Google Cloud Platform (GCP)

🎯 主要な強み

  • Cloud Runのシンプルさ
  • 「ソースコードからURLへ」体験
  • 継続利用割引(自動適用)
  • 開発者体験の優れたUX

💰 コスト特性

  • Cloud Run: スケールトゥゼロ対応
  • 実際の使用時間のみ課金
  • リザーブ不要の自動割引
  • 透明性の高い料金体系

⚙️ 推奨構成

  • Cloud Run(コンテナ実行)
  • Cloud SQL for MySQL
  • Cloud CDN
  • Cloud Armor(WAF)

3. Microsoft Azure

🎯 主要な強み

  • Container Apps + KEDA統合
  • Daprによるマイクロサービス対応
  • エンタープライズ親和性
  • 高度なイベント駆動対応

💰 コスト特性

  • Azure予約による割引
  • 柔軟なプランオプション
  • 包括的な価格計算ツール
  • 長期契約での大幅割引

⚙️ 推奨構成

  • Azure Container Apps
  • Azure Database for MySQL
  • Azure CDN
  • Application Gateway WAF

🤔 GCP vs Azure:選択の指針

GCPを選ぶべき場合:

  • 開発の簡便性とスピードを最優先したい
  • シンプルなアーキテクチャで十分
  • Kubernetesの深い知識が不要

Azureを選ぶべき場合:

  • 将来的に複雑なマイクロサービスへ拡張予定
  • イベント駆動アーキテクチャが重要
  • Microsoft製品との統合が必要

⚠️ 移行時の考慮事項

  • 移行期間中の一時的なコスト増加
  • チームの学習コストと時間
  • データ移行とダウンタイム計画
  • 新プラットフォームのツールチェーン整備

🇯🇵 経路C:国内クラウドプロバイダーの評価

1. さくらインターネット AppRun

🌟 最も注目すべき国内オプション

Knativeベースのモダンなサーバレスプラットフォーム

✅ 主要な利点

  • 現在ベータ版で無料
  • データ転送料が無料
  • 完全な日本語サポート
  • 円建て安定価格
  • Knative(Cloud Run互換)

⚙️ 提供サービス

  • AppRun(サーバレスコンテナ)
  • コンテナレジストリ
  • データベースアプライアンス
  • ウェブアクセラレータ(CDN)
  • WAF(複数製品対応)

⚠️ リスクと課題

  • ベータ版(安定性未知)
  • 正式版の料金未定
  • 機能成熟度がハイパースケーラーに劣る
  • エコシステムが限定的

💡 コスト優位性の分析

データ転送料無料の影響:

AWSでは現在CloudFrontに月額約¥69,481を支払っています。さくらインターネットではこのコストが大幅に削減される可能性があります。

予想TCO:正式版リリース後も、ハイパースケーラーより30-50%低い可能性

2. その他の国内プロバイダー

富士通 FJcloud-O

適合度:中

  • Red Hat OpenShiftベース
  • エンタープライズ向け機能充実
  • コンプライアンス対応に強み
  • 課題:コストが高い、複雑性

NTTコミュニケーションズ

適合度:中

  • Enterprise Cloudサービス群
  • 大企業向けソリューション
  • 手厚いサポート体制
  • 課題:コスト削減目的には不適

Xサーバー

適合度:低 非推奨

  • 共有ホスティング・VPSサービス
  • 重大な問題:
  • マネージドサービスなし
  • すべてのインフラ管理が手動に
  • 運用コストとリスクが激増
  • 現代的アーキテクチャに不適合

⚠️ 国内プロバイダー選択の注意点

日本のクラウド市場は従来、エンタープライズ向けの重厚なソリューションか、基本的なVPSホスティングの二択でした。

AppRunの登場は「第三の道」を示唆:ハイパースケーラー流のモダンPaaSを国内で提供する新しい選択肢です。

📊 比較分析と戦略的意思決定

1. 戦略的意思決定マトリクス

評価基準 経路A
AWS最適化
経路B
GCP
経路B
Azure
経路C
さくらAppRun
推定月額コスト ¥57,500
¥60,000-80,000
低〜中
¥60,000-80,000
低〜中
¥40,000-60,000
最低
推定削減率 50-70% 40-60% 40-60% 60-80%
移行リスク
実装期間 3ヶ月 6-12ヶ月 6-12ヶ月 6-12ヶ月
将来スケーラビリティ 非常に高 中〜高
セキュリティ
国内サポート 非常に高
総合推奨度 ★★★★★
即時実行推奨
★★★☆☆
PoC推奨
★★★☆☆
長期的選択肢
★★★★☆
PoC推奨

2. トレードオフ分析

経路A:AWS最適化

利点:

  • 最短で価値実現
  • 移行リスクゼロ
  • 学習コスト最小
  • 即座の大幅削減

トレードオフ:

  • 他プラットフォームの利点を先送り
  • ベンダーロックイン継続

経路B:ハイパースケーラー

利点:

  • ベストオブブリード選択
  • 価格交渉力の獲得
  • より優れたDX可能性
  • 最新技術へのアクセス

トレードオフ:

  • 移行コストと時間
  • チームの学習コスト
  • 一時的な不安定性

経路C:国内プロバイダー

利点:

  • 最低TCO可能性
  • 完全日本語サポート
  • 円建て安定価格
  • データ転送料無料

トレードオフ:

  • 最高の技術リスク
  • 機能制限の可能性
  • エコシステム限定

3. 年間コスト予測比較

💰 3年間の累積コスト予測

シナリオ 初期移行コスト 年間運用コスト 3年間総コスト
現状維持(最適化なし) ¥0 ¥3,426,888 ¥10,280,664
経路A:AWS最適化 ¥500,000 ¥690,000 ¥2,570,000
経路B:GCP ¥2,000,000 ¥840,000 ¥4,520,000
経路B:Azure ¥2,000,000 ¥840,000 ¥4,520,000
経路C:さくらAppRun ¥1,500,000 ¥600,000 ¥3,300,000

※ 移行コストは人件費を含む概算値。さくらAppRunは正式版料金を保守的に見積もり。

🎯 最終提言:最適な前進の道筋

📌 段階的アプローチ戦略

リスクを最小化しながら、短期的・長期的利益を最大化するための実行計画

フェーズ1:即時実行(今後3ヶ月以内)

🚀 経路A:AWS最適化を実行

実施内容:

  1. Week 1-2: RDSプロビジョニング済みインスタンス選定
    • gai-production: db.t4g.large
    • qsh/marketprice: db.t4g.medium
    • 3年間リザーブドインスタンス購入
  2. Week 3-4: 移行計画策定とステージング準備
  3. Week 5-8: データベース移行実行
    • ステージング環境での検証
    • 本番カットオーバー(低トラフィック時間帯)
    • パフォーマンス監視
  4. Week 9-10: Lambda最適化
    • Graviton2 (arm64) への変更
    • Lambda Power Tuning実行
    • メモリ設定最適化
  5. Week 11-12: 監視と微調整
    • コスト削減効果の確認
    • パフォーマンスメトリクス分析
    • ドキュメント整備

期待される成果:

  • 月額コスト:¥285,574 → ¥57,500
  • 削減額:約¥228,000/月(約80%削減)
  • 年間削減額:約¥2,736,000

フェーズ2:戦略的検証(3-12ヶ月)

PoC #1: GCP Cloud Run

目的:開発者体験とコスト効率の検証

スコープ:

  • 非クリティカルなマイクロサービス1つ
  • Cloud SQL for MySQLのパフォーマンス
  • Cloud Runの自動スケーリング
  • 実際の運用コスト測定

期間:3-6ヶ月

予算:¥500,000-800,000

PoC #2: さくらAppRun

目的:コスト優位性と安定性の検証

スコープ:

  • 開発/ステージング環境の全面移行
  • データ転送料無料の効果測定
  • 日本語サポートの質評価
  • 正式版料金発表待ち

期間:3-6ヶ月

予算:¥300,000-500,000(現在ベータ版無料)

📊 PoC評価基準

評価項目 重要度 測定方法
実際の月額コスト 3ヶ月間の平均請求額
開発者生産性 デプロイ時間、開発者フィードバック
パフォーマンス レスポンスタイム、スループット
安定性 稼働率、エラー率
サポート品質 問い合わせ対応時間と質
移行の容易性 必要工数、技術的課題

フェーズ3:最終意思決定(12ヶ月後)

📋 意思決定フレームワーク

PoC完了後、以下のシナリオから選択:

シナリオ1:AWS継続(推奨条件)

  • 最適化後のAWSで十分な満足度
  • PoCで決定的な優位性が見られない
  • 移行のリスクが利益を上回る

シナリオ2:GCPへ全面移行(推奨条件)

  • PoCで開発生産性の大幅向上を確認
  • コスト削減効果がAWS最適化と同等以上
  • チームがCloud Runに高い評価

シナリオ3:さくらAppRunへ全面移行(推奨条件)

  • 正式版の料金が魅力的
  • PoCで安定性を確認
  • TCOが他オプションより明確に低い
  • 国内サポートが重要な価値

シナリオ4:ハイブリッド戦略

  • AWSを主要環境として維持
  • 特定ワークロードを他プラットフォームへ
  • ベンダーロックイン回避とコスト最適化の両立

🎯 最終推奨事項

  1. 今すぐ開始:経路Aの最適化を遅延なく実行してください。これだけで年間¥270万円以上の削減が実現します。
  2. リスクヘッジ:並行してGCPとさくらAppRunのPoCを開始し、データに基づく長期判断を準備してください。
  3. 柔軟性維持:最適化されたAWS環境は優れた「フォールバックプラン」となります。移行を急ぐ必要はありません。
  4. 継続的改善:四半期ごとにコストとパフォーマンスをレビューし、さらなる最適化機会を探してください。

⚠️ 避けるべき判断

  • 現状維持:最適化せずに高コストを放置することは、資金の浪費です
  • 性急な全面移行:PoCなしでの大規模移行は高リスクです
  • Xサーバー等への移行:VPSベースの環境は運用負荷を激増させます
  • 過度な複雑化:コスト削減のために運用複雑性を増すのは本末転倒です